ウラガミ

いわゆるチラ裏

人間は『「ロボット」心理学』を読んだ方が良い

主語がデカい。
けどそう言いたくなる本。

『「ロボット」心理学』は佐々木正悟さんの自費出版による処女作(今の電子書籍は再販)で、種としてのヒトの「退屈しやすいという性質と、飽きっぽいという性質」についての本。

こういう話題を扱った最近の本だと「こうすれば習慣化する!」とか「こうすればやめられる!」みたいな話をしそうなもんだけど、この本ではとにかく「ヒトはなぜ飽きるのか」そして「飽きることの功罪」が豊富な例とともに解説されている。

有名な心理学の実験が例としてたくさん登場してたり、「こうすればうまくいく!」みたいな話が(ほぼ)無いので、ビジネス書というより教養書とかカジュアルな学術書っぽい雰囲気。

内容をめちゃくちゃ圧縮して書くと、

ヒトは「新しもの好き(ネオフィリア)」であり、既知のものには注意を向けず_ロボットに処理させて_、未知のものに注意を払うようにできている。その性質こそが、ヒトがここまで発展してきた所以であり、ここまで不幸になった所以でもある。

ってこと(読んでない人に伝わるかは謎)なんだけど、具体的な例と平易な言葉で解説されているので分かりやすかった。飽きることについて、良い意味・悪い意味の両面から知れるので見識が広がった感もある。

個人的に揺さぶられたのが第四章。

四章では主に社会について書かれていて、「3 ネオフィリアの楽観主義」では震えるような文章が続く。

自分の言葉で書いてもアレ(語彙力の無さ……)なんでいくつか紹介する。

はた目から見ると、これはある意味相当バカげている。新しい女性を見れば次々に惚れ込むドン・ファン氏と、人間の社会は全く同じである。少し長い目で見れば、ほれては飽きて、ほれては飽きての繰り返しにすぎない。
私たちは、本質的にものすごく実験的で、だから楽観的だ。失敗をおそれず何でもやってみようという点が、おそらく人間のもっとも人間らしいところである。二十世紀だけを振り返ってみても、人間の壮大な実験は恥ずかしがるべき、十二分の理由があったはずだ。国際連盟も、民族主義も、ナチズムも、共産主義も、帝国主義も、みんな自信満々だった。
「新しい」という旗印は、とにかくヒトを魅了する。私たちが何もかも整った世界を築いたところで、そこに安住して「シアワセ」を満喫できないのは明らかなのだ。自殺率も増大するはずである。

こんな文章をバンバン書かれると「新しもの好き」の性質を恐ろしく感じるけど、それはヒトの長所でもあって(もちろん本の中でもその辺はしっかり書かれてる)、新しもの好きだからこそ自分はこうやって本を読めて、感動できている。それを自覚するしないに関わらず。

でも、それに自覚的でいたいなと思う。
そんな本です(謎の〆)